昨年の冬に訪問したスロヴェニアの生産者、ラドヴァン・シュマンから待望の新ヴィンテージがリリースされました!
エネルギーを閉じ込めたクレイボトル、コルクを止めるキャップシールの替わりに蜜蝋を使うという、他に例のないこだわり。
圧倒的存在感を放つ極少生産のスロヴェニアワインです。
ぜひお試しください。
ムーン・ドロップス 2021
~以下、訪問記です~
2023年2月19日
昨年のヨーロッパ訪問記、最後の旅は、オーストリアの国境まで15kmほどに位置する、スロヴェニアのラドヴァン・シュマンのワイナリーへ。
滞在していたオーストリアの蔵元シュトロマイヤーのフランツが、ラドヴァンと友人だったのもあり、一緒に訪問しました。
自然の中に溶け込んだ、コージーな可愛らしい自宅で、
家先で可愛い猫が出迎えてくれた。
ラドヴァンは何度かフランツのワイナリーを訪れているが、5年越しにやっとフランツが来てくれたことに大喜びしていた。
言語はスロヴェニア語だがドイツ語も7割は分かるといった様子。
会って早々とにかく陽気でよくしゃべる!(酔っているのかな?と思うほど)
夕方近くなっていたので暗くなる前に自宅そばの畑へ。
畑は自宅のすぐ傍に1ha、別の畑と合わせて計7haを所有。
ブドウ畑にいる羊達は人懐っこくてかわいい!
【自宅傍の畑でのラドヴァンの話】
ブドウも人間も同じ。フンガス(菌、カビ)も決して毒ではない。病気になるのはメッセンジャーで何かのバランスが崩れているのを教えてくれている。人生のプレゼントなんだ。
太陽、水、土、空気のエレメント。雨のシーズンであれば、フンガスが育つのは当たり前。それを殺そうとするのは間違っている。人間の体も同じ。メッセンジャーを殺そうとしてはいけない、聞くことが大事。
科学肥料も自然のバランスを邪魔している。本来は邪魔をしてはいけないんだ。隣の畑はコンベンショナルな畑(オーガニックでない畑、みんなこの言い方をする)、地面の草は茶色。
飼っている羊にヤギ、ニワトリ、蜂たちがさらによいシナジーを生んでいる。
自宅近くの畑には約10匹の動物が。1ヘクタールに10匹の動物がちょうどよいバランスだそう。多すぎてもダメ。
別の畑と合わせて約60匹の動物がいる。(ほとんど羊。)
ニワトリだけはキツネに食べられてしまうのが少し問題だとか…
畑にはブドウ以外にも様々な木々が育ち、虫や動物とサポートし合っている。
動物以外にも蝶や蜂、ラベンダーなどのハーブが助けてくれる。
「動物、虫みんな一緒に畑で働く同僚なんだ。」とラドヴァン。
草刈りは年に2回だけ実施。この畑は樹齢20年。
訪問した日の前日に生まれたばかりの子羊。
フランツとラドヴァンはとても良い関係。
常に互いのワイン造りの話をしては、意見を交換し合っていた。
(英語とドイツ語が混ざり合う会話)
50匹の動物がいる2km離れた畑へ。
約5ha、樹齢40年の畑。美しい絵が描かれた養蜂箱があちらこちらに。
養蜂はエコシステムの為のみ。
みつろうと家族が少し食べるだけ。プロダクトにはしたくないとのこと。
蜂は本当に働きもの。少しの毒を持っているが、余計なバクテリアを殺してくれる、しっかり仕事をしている。
「彼らはマスターオブサステイナブルシステム、女王蜂がマスター。」
とラドヴァンは言っていた。
ここの雨量は平均で1500ml、多い時で2000ml。
22年ヴィンテージは9月に降った雹でなんと90%のぶどうがダメになってしまった。なのでリリースは不可能…
「それが自然なんだ、仕方のない事。」と落胆する様子はなく、受け入れているラドヴァン。
コンポストは2年寝かしていて、畑の傍に1年熟成のものと2年熟成のコンポスト。ぶどうの搾りかす、澱も全て捨てない。
自宅のセラーへ移り、テイスティング。
2004年からここに住んでいて、両親は少し離れたヴィレッジに住んでいる。従業員はおらず、友達が剪定や収穫を手伝ってくれている。
ワインは通常2年寝かせ、最後に少しだけ暖かいレンガでできた部屋で落ち着かせボトリングをする。
20年と21年ヴィンテージを試飲。
どれも時間をかけてさらにすごいワインになるが、すでに完成度の高い素晴らしい出来…クレイボトルの中に閉じ込められたエネルギーが、一気に流れ出てくるかのよう。
フランツも「スーパ!」と絶賛。 ※ドイツ語のスラングで最高!という意味
ごく僅かに造った22年ヴィンテージも試飲。
ムーンドロップ、サンドロップ、ピノグリ、全てMIXしたもの
クレイボトルに入れる新しいキュヴェ、少量なのでリリースするかは未定。
ほとんどがスロヴェニア産の木樽を使用。
木を選んで熟成用の樽を作ってもらっているそう。自分の木で作ることも!
チェリー、マルベリー、アカシアのバレルもあるがほとんどはオーク素材。
チェリーはややスイートな仕上がりになるとラドヴァン。
樽に聴診器が!
イーストやバクテリアの動きが音で分かるそう。
地元の野豚の原木生ハム。
キヴァンツァというスロヴェニア定番のパン
中にカッテージチーズ、表面はキャラメリゼしてあり、ほんのり甘く美味。
フランツが持ってきたワインも水のように飲み干す豪快なラドヴァン。
ワインに負けないくらい人柄もエネルギッシュでした!
シュタイヤーマルクからここまで導かれましたが、シュマンのワインもまた、唯一無二の素晴らしいワインです。
次回のヴィンテージは霜の被害で90%の収穫量ダウンとの事で、このヴィンテージの後はしばらくリリースはなさそうです…
ぜひお試し下さい。